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ニュース、News、Nius [ニュース]

今でこそ「ニュースのためなら火の中、水の中」なんて偉そうなことが言えますが、
僕はかつてニュース取材を生業とする仕事なんてまっぴら、と思っていました。
僕の放送人としての人生は「ラジオで音楽番組を作ること」だけ、と考えていました。

そんな僕が社会人1年生、入社した放送局で最初に配属された部署はこともよろうに
「報道部」でした。お先真っ暗、夢も希望も休みも無い暗澹たる毎日。
記事を書く上司先輩の鉛筆を削り、お茶を入れ続け、やっと書かせてもらった原稿も
赤ペンでの直しがびっしり。徹夜で何十本、何百本、新聞配信記事のリライトをして、
ふらふらになりながら、そのままネタを求めて朝駆け夜討ちへと飛び出す毎日。

いやだいやだと言い続ける困った若造に呆れた会社の思いやりで
その後ラジオ制作に異動は果たしたものの、上司はかつての報道部の鬼デスク。
「ラジオもこれからは報道だ、報道部経験のあるお前はニュース担当」と
申し付けられ、以来ニュースや情報番組をひたすら担当。
台風災害や山火事からサリン事件に長野オリンピックと様々な取材現場に連日
足を運ぶごとに徐々にニュースの面白さ、現場の緊張感、人との出会いが
面白くなってきました。と同時に阪神淡路大震災でニュースが果たし得る役割と
限界を味わい、自分の進むべき道が分からなくなってしまったのも事実。

そんな自分を見つめ直し、鍛えるためにでかけたパプアニューギニア。
どこか「日本人の自分がパプアニューギニアの人たちに物を教える」という
「上から目線」を持ちながら協力隊員としての活動が始まりました。

そんな僕の「勘違い」を教えてくれた現地のジャーナリストがノエル・ビララです。

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僕の配属された国営ラジオNBCの首都局で記者として経験を積み、オーストラリア
ABCブリスベーンでの研修も経験してきた彼は、故郷東ニューブリテン州の支局に
戻って来た人物。彼は昼夜を問わず連日のように自分の車を飛ばして、時には
セスナ機やモーターボートをチャーターしてジャングルの奥深く、離島の隅々へ
MD録音機を片手に出掛けて行きました。他の職員たちが一日局でぼーっと過ごして
いるような(でもそれでいいんだけど…)中、彼だけはいつも取材に出掛けて行く。

赴任当初は土地勘も交通手段も分からない僕は、彼の取材の手伝いと称して
連日彼と一緒にそんな彼の取材場所に出掛けて行きました。
テレビなんて全く存在しないジャングルの村々の「情報ツール」はラジオだけ。
そんな我々Radio East New Britainの毎夜のニュース番組の看板記者である彼を
知らない人はいません。そんな彼はどんどんと地域の隅々に入り込み、時には
こうして一緒にジャングルで食事を囲みながら取材を敢行します。

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「どうしてそんなに頑張るの?」とある時、彼に尋ねました。すると彼は
美味しそうにバナナを頬張りながら「人の話を訊くこと、そしてそれをまた別の
人たちに伝えることができるニュースの仕事は楽しいじゃないか」と満面の笑顔。
その彼のコトバから、僕は「報道」という仕事がどれほどやりがいに満ちた仕事か、
そしてラジオの果たすべきこの「報道」という仕事がどれほど大切なことかを
思い知らされました。それ以来、僕はパプアを去るまでの2年間、ずっと彼と
一緒にこのニュース番組を担当、彼がするのと同じようにジャングルの村々を
周り、人々と膝と膝を突き合わせ、一緒に食事や睡眠も共にしながら、歌い踊り、
彼らのコトバを「取材」し続けました。

軽井沢に来て、再び僕はリスペクトしたいジャーナリストに出会いました。
かつて自分の大好きな音楽がどのラジオ局から何時にオンエアされるかを調べ、
ラジカセの前でドキドキしながらエアチェックをしていた時にずっとお世話になった
雑誌「FMfan」の編集長をお務めになった「軽井沢ニュース」の梅原編集長。

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梅原さんの細かなそして丁寧な取材のやり方は僕にとってはまさに「デスク」的な
存在。そして音楽を、軽井沢を、軽井沢の人たちを大切に思われる生き方は、
「軽井沢のニュースマン」として見習わなくては、と思っています。

信越放送の報道部の諸先輩大先輩には「何を今さら、遅すぎる!」と怒られてしまうと
思いますが、僕がこうしてまがりなりにもパプアで、軽井沢でニュースの仕事を
続けて来れたのは、しっかりと皆様に鍛えていただいたおかげです。
そしてパプアで、軽井沢で「ニュースを待ち望むリスナーの皆さん」の存在がある限り、
僕はノエルや梅原さんのように世界の何処に行っても「走り続けたい」と思うのです。

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